表面処理用語辞典

試験方法

膜厚測定

皮膜厚さや塗膜厚さの測定方法は JIS H8680 に規定されている。
アルミニウムの陽極酸化皮膜や塗膜の厚さは「渦電流式厚さ測定器」や「接眼測微計を付けた顕微鏡」を用いて測定する。
通常、製品を破壊することなく測定可能な「渦電流式厚さ測定器」を用いる。

光沢測定

試料表面の光沢程度を数値化してあらわすこと。
JIS Z8741 に測定方法が規定されている。試料表面の光沢程度により測定条件が異なり、アルミニウム上の塗装面は通常60°鏡面光沢度で表す。

光沢保持率( G.R )

試験前の光沢度に対する試験後の光沢度の割合を表示する。下式により求める。
G = G1 / G0 × 100
G:光沢保持率(%),G0:試験前の光沢値,G1:試験後の光沢値

色調測定

試料表面の色調を数値化してあらわすこと。測定方法はJIS Z8722 、測定に用いる標準的な光源はJIS Z8720 に規定される。
色を数値化する方法としてL*a*b*表色系(JIS Z8729)やマンセル表色系(JIS Z8721)等がある。

色差(ΔE)

物と物との色の違いを数値的にあらわし、ΔEと表記する。
色の違いを数値的に捉え色差として表現するには、色そのものを数値化する必要があり、 L*a*b*表色系等であらわす。
L*a*b*表色系での色差は下式により求める。(JIS Z8730)
ΔE ={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)21/2
ΔL*=L1*−L2*
Δa*=a1*−a2*
Δb*=b1*−b2*
ΔE : 試料1と試料2の色差
L1* a1* b1* : 試料1の測色値
L2* a2* b2* : 試料2の測色値


<色差と人の感覚的な捉え方(例)>

色差(ΔE) 呼び名 摘 要
0.2 〜0.4 限界色差 訓練を積んだ人が再現性をもって識別できる限界。
0.4 〜0.8 特級 (厳格色差) 十分に調整された光電色彩計の誤差範囲。一般の人が再現性をもって識別できる限界。塗装の再現性、目視判定のバラツキなどからみてナンセンスさを失わない色差規格を設定できる限界。
0.8 〜1.6 1 級 (許容色差) 並べて見れば、ほとんどの人に色差が感じられるレベル。十分に調整された光電色彩計の、器差を含む誤差範囲。
1.6 〜3.15 2 級 (実用色差) 離して並べればほとんどきづかず、一般には同じ色だと思われるレベル。
3.15 〜6.3 3 級 塗料では色違いといわれる領域。

出典:アルミニウム表面技術便覧

NBS単位 色差の感覚的表現
0 〜 0.5 微かに trace
0.5 〜 1.5 僅かに slight
1.5 〜 3.0 目立つ noticable
3.0 〜 6.0 感知する程 appreciable
6.0 〜 12.0 大いに much
12.0 以上 非常に very much

出展:NBS 単位

※ NBS 単位 : National Bureau of Standards,USA の略 米国標準局にて定めたもの

マンセル表色系

アメリカ人のA .H .マンセルが考案した表色系。
色の三属性である色相、明度、彩度をもとに、それぞれ番号や記号で分類された色票を使い、物体の色と色票とを見比べて色を表現する表色系。
5R  4.2 /11.5
↓  ↓  ↓
5 の赤 明度 彩度 色相環5R の明度4.2 、彩度11.5 の色

碁盤目試験

塗膜表面にカッターを用いて1mm 間隔に縦横6 本ずつの切込みを入れ25個の碁盤目をつくる。この上にセロハン粘着テープを押し付けた後、60°に近い角度で強く引きはがして付着性を評価する試験。
碁盤目内の塗膜が剥がれた枡目の個数により評価する。(JIS K5600-5-6)

沸騰水碁盤目試験

試験片を95℃以上の脱イオン水に5hr浸せきした後に行う碁盤目試験。(JIS H8602)

塗膜の耐溶剤性試験

キシレンを浸した脱脂綿などで塗膜面を擦り、試験前後の塗膜の表面硬さの低下によって、塗膜の耐溶剤性を調べる試験。(JIS H8602)

耐衝撃性試験

先端が球状(直径1/2 インチ)のおもり(500g,1kg)を50cm の高さから塗装面に落し、塗膜の割れ・はがれの有無を判定する。(デュポン式衝撃試験)(JIS K5600-5-3)

エリクセン試験

塗装を施した試料面に対し凸に張り出し加工を行い、基材変形による塗膜の割れ・はがれの有無を判定する。(JIS Z2247)

耐酸・耐アルカリ性試験

5%硫酸、0.5%水酸化ナトリウム水溶液を接触させ、腐食発生の有無を判定。
腐食の発生程度を レイティングナンバ(腐食面積率)によって評価する。(耐アルカリ,JIS H8602)

キャス耐食性試験

5%の塩化ナトリウム水溶液に塩化第二銅を添加し酢酸を用いてpH3に調整した溶液を噴霧し、表面の腐食状況を評価する試験。腐食の発生程度を レイティングナンバ(腐食面積率)によって評価する。(JIS H8681−2)

複合耐食性試験

紫外線蛍光ランプ式促進耐候性試験を行った後、キャス試験を行い、外観及び腐食の発生程度をレイティングナンバ(腐食面積率)によって評価する。(JIS H8602)

塩水噴霧試験

塩化ナトリウム水溶液を噴霧し、表面の腐食状況を評価する試験。腐食の発生程度を レイティングナンバ(腐食面積率)によって評価する。(JIS Z2371)

複合サイクル試験

塩化ナトリウム水溶液の噴霧と乾燥を繰り返し行い皮膜の耐食性を調べる試験。

レイティングナンバ(RN)

腐食の程度を腐食面積率により表す指標。腐食発生がない状態を RN 10 とし、それ以降、9.8,9.5,9.3,9,8,……と表わす。

<レイティングナンバと腐食面積率の対応>

レイティングナンバ 腐食面積率
RN 10 0 % (腐食発生無し)
RN 9.8 0.02 %以下
RN 9.5 0.05 %以下
RN 9.3 0.07 %以下
RN 9 0.1 %以下
RN 8 0.25 %以下

促進耐候性試験

カーボンアーク灯やキセノンランプ等の人工光源から発する光と断続的な人工降雨、結露などを与える装置を用い、試料の物理的および化学的変化を調べる試験。(JIS H8602)

サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機

アルミニウム建材の促進耐候性評価のため広く用いられる試験機。 カーボンの燃焼による紫外線を連続的に照射するとともに、降雨を想定した水の噴霧を定期的に行う。
試験片に対し照射される紫外線量は、試験時間200〜250 時間が屋外暴露試験1年に相当する。(「耐候光と色彩」須賀長一著より)(JIS B7753)

屋外暴露試験

試料を屋外の自然環境に暴露して、化学的・物理的性質の経時変化を調べる試験。
一般的には、南面方向、傾斜角度30〜45 度の試験条件で実施する。(JIS Z2381)

砂落し摩耗試験

人造研削材を1m の高さから自然落下させ、皮膜や塗膜が削除される時間を測定しこれらの耐摩耗性を調べる試験。(JIS H8682−3)

アルカリ滴下試験

アルカリ滴下試験装置を用いて陽極酸化皮膜が溶けて素地が露出するまでの時間によって耐アルカリ性を調べる試験。(JIS H8681−1)

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