表面処理用語辞典

表面処理工程

前処理

前処理

表面処理をするに当たり表面状態調整、装飾的効果などのために主工程の前に行う処理のこと。アルミニウムの表面処理工程においては「陽極酸化処理」の前に行う「脱脂」、「エッチング」、「スマット除去」の処理を総称して前処理と呼ぶ。

脱脂

押出し加工や成形加工などでアルミニウム表面に付着した油脂分や汚れを除去する処理。

エッチング

脱脂では除去できないアルミニウム表面の汚れや傷の除去、材料表面の光沢調整を目的として、化学的あるいは電気化学的に表面を溶解する処理。

スマット除去

エッチングの際に表面に残ったアルミニウムに含まれる不純物を酸性水溶液により除去する処理。

梨地処理(マット処理)

ダイスマークをほとんど目立たなくし、平滑でかつ、きめの細かな梨地目外観を得るための処理。特殊なアルカリ性薬品または酸性薬品を使用して処理を行うが、当社ではアルカリ性薬品を用いた方法を採用している。

アルカリエッチング

アルカリ性の薬品を用いてエッチングすること。 一般的に、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)が用いられる。

酸エッチング

酸性薬剤を使用してエッチングすること。光輝性の少ない意匠やマット処理による外観が得られる。
ガラス容器用キャップ等への意匠性付与の用途に用いられることが多い。

ブラスト

研削材を加工物に吹き付けて、加工物表面の欠陥除去あるいは梨地外観を付与する表面加工方法。研削材の吹き付け方式として、圧縮空気を使用したエアー方式や遠心力を用いた方式などがある。

サンドブラスト

圧縮空気または遠心力などで砂または粒状の研削材を品物に吹き付けて行う表面加工方法。

ショットブラスト

圧縮空気または遠心力などでショット、カットワイヤ等の研削剤を品物に吹き付けて行う表面加工方法。

陽極酸化処理

陽極酸化皮膜

アルミニウムを陽極として硫酸等の水溶液中で電解することにより生成する酸化皮膜。

封孔処理

陽極酸化によって生成した多孔質皮膜の微細孔を封じる処理。耐食性、耐候性、耐汚染性など向上のために実施する。
一般には水和封孔処理が用いられ以下に示すような方法がある。
・(加圧)水蒸気封孔
・金属塩封孔
・沸騰水封孔

低温金属塩封孔

金属塩封孔処理に含まれる手法で、ふっ化ニッケル塩等を含む浴中で20〜30℃の低温条件にて封孔する方法。他の封孔処理と比べ低い温度での処理が可能であり、同程度の皮膜性能が得られる。 当社石川工場ではこの方法を採用している。

湯洗

陽極酸化塗装複合皮膜の皮膜〜塗装一貫ラインにおいて、電着塗装工程の直前に行う処理。70〜80℃の温水に浸漬し耐食性を付与する。

着色・模様付け

電解着色

陽極酸化皮膜を生成後、金属塩を溶解した浴中で電解を行って皮膜の微細孔中に金属又は金属化合物を析出させて着色する方法。ステン〜ブラックの色調が得られる。

陽極酸化塗装複合皮膜

陽極酸化処理により皮膜を生成した後、塗装を施すことにより耐食性、耐候性、装飾性などの品質を更に向上させた表面処理のこと。JIS H8602に規定されており、複合耐食性及び耐候性によって区分される。複合皮膜とも言う。

複合着色

電解着色などにより陽極酸化皮膜を着色した後、顔料濃度の低いカラークリヤ塗装を施す。 着色した陽極酸化皮膜の色とカラークリヤの色が複合された色調が得られる。 当社の「Mグレー BCG」、「Dグレー MGR」が該当する。

染色

陽極酸化処理後、皮膜表面に染料を吸着させる処理。使用する染料は有機系、無機系の2種類に区分することができる。
一般的に、有機染料を用いた染色の場合、電解着色に比べ多種多様な色調を得ることができるが、耐候性の点で劣っている。また、無機染料の場合、有機染料のものに比べ耐候性は良好となるものの、色調の制約が大きくなり鮮やかな色調を得ることができない。

塗装

着色塗料

着色塗装に用いる塗料は顔料の種類や、樹脂により以下のように分類される。

●顔料による分類
ソリッド色(着色顔料のみ使用)
メタリック色(着色顔料と金属粉を併用)

●塗料樹脂による分類
アクリル樹脂塗料 ・・・・・・ (中温焼付)
ウレタン樹脂塗料 ・・・・・・1 液型(中温焼付) 、2 液型(低温焼付)
フッ素樹脂塗料 ・・・・・・カイナータイプ(高温焼付) 、ルミフロンタイプ 1液型(中温焼付) 、ルミフロンタイプ 2液型(低温焼付)

※焼付温度は慣用的に下記のように分類
低温焼付 ・・・・・・ 150 ℃まで
中温焼付 ・・・・・・ 150 ℃を越えて200 ℃まで
高温焼付 ・・・・・・ 200 ℃を越えるもの

顔料

水、油、有機溶剤等に溶けない性質を持つ塗料中に含まれる微粉体の総称であり、塗料に与える性能によって呼び方が異なる。
着色顔料 塗料を着色するために用いる。
体質顔料 塗膜の補強、厚膜化、光沢調整のために用いる。
防錆顔料 金属のさびを防ぐ働きをもつ
金属粉顔料 メタリックやパール調の特殊外観が得られる

エナメル塗料

平滑で光沢のある着色塗膜ができるように透明度の高い合成樹脂等を溶剤に溶かすか、または水に分散させ、さらに着色顔料を加えて作られた着色塗料の総称。使用する顔料によりソリッド塗料、メタリック塗料に分けられる。

ソリッド塗料

着色顔料のみを使用した塗料。色調の再現性が良い。一般的に、使用する着色顔料は有機顔料と無機顔料に区分され、有機顔料は鮮やかな色調が得られる反面、耐候性の面で劣る場合があり注意が必要となる。無機顔料は、耐候性は良好であるが、鮮やかな色調が出せない。

メタリック塗料

着色顔料と鱗片状のアルミニウム粉末を併用した塗料。金属感のある塗装が可能であるが、塗装条件により外観差が生じやすいので注意が必要となる。

クリヤ塗装(塗料)

着色顔料を含まない透明な樹脂塗装のこと。艶消剤(艶消顔料)を用いて艶を調整し、艶の違いにより艶有りと艶消しに区分される。当社のSC〜KC等へは艶消しクリヤが施される。陽極酸化塗装複合皮膜の場合、下地の色により光沢値が異なり濃色になるほど光沢値は低くなる。

カラークリヤ塗装(塗料)

クリヤ塗料に微量の着色顔料を混合させた半透明な着色塗装。この塗装は下地の色調の影響を受け、下地の色と塗料の色が複合した色調になる。 当社ではMグレーやDグレーがこの方法で処理されており、この複合で処理する方法を複合着色と呼ぶ。

エポキシ塗装(塗料)

一般的に、付着性、耐薬品性、強靭性、加工性および耐食性に優れるが、他の塗料系樹脂に比べ耐候性の点で劣る。
アルミ建材の用途では、着色塗装のプライマーとして使用される。

メラミン塗装(塗料)

低温硬化性(130 〜140 ℃)を持ち、作業性も良いため早くから工業塗装ラインに用いられたる。パーティション、内装建材、鋼製家具、事務機器、家電製品、自動車関連等広い分野で使用されている。
ただし、耐候性の面ではアクリル樹脂系の塗料に比べ劣っており、屋内仕様として用いられることが多い。

無機系塗料

シロキサン結合(− Si− O − Si − O −)を持ち耐熱性や耐候性に優れるシリコン樹脂と、塗装作業性や耐油性を向上させるためアルキド樹脂やアクリル樹脂等の有機樹脂とブレンドしたものが無機系塗料として一般的に用いられる。
無機系樹脂の比率が高くなると適正膜厚の確保や乾燥条件の制御等、塗装作業性が悪くなる。一方、有機樹脂の比率が高くなると塗装作業性は良好となるものの、無機系樹脂の特長である表面硬度や耐熱性が犠牲となる。

光触媒塗料(コーティング)

二酸化チタンをはじめとする金属酸化物が持つ光触媒反応による機能性を付加したコーティング剤。この光触媒反応によって、有機物に対する分解性を持つ活性酸素が生成され、抗菌、防汚、防臭、空気清浄(NOX 分解)、水質浄化等の効果を付与することが可能となる。

電着塗装

比較的低濃度の水性塗料を満たした槽中で、電導体である被塗物と対極との間に電流を通じ被塗物上に均一な塗膜を電気的に析出塗装する方法。
スプレー塗装等に比べ塗料損失が小さく、また複雑な形状へのつきまわり性が良好である。

スプレー(エアスプレー)塗装

霧吹きの原理を利用したエアスプレーを用い塗装を行う。 ノズルから吐出する塗料を空気キャップから吹出す圧縮空気によって微粉化し、塗装を行う。他の塗装方法に比べ塗料の損失が大きい。

静電塗装

塗装機スプレーヘッドと被塗物との間に数万ボルトの直流高電圧を印加、帯電した塗料粒子を被塗物に吹き付ける塗装方法。
塗料の損失が比較的少なく、能率の高い塗装方法である。

陽極酸化皮膜下地

当社では着色塗装の下地処理として薄膜の陽極酸化皮膜を用いる。この仕様では化成皮膜に比べ加工時の塗膜付着性に優れており、プライマー工程の省略が可能。また、ふっ素樹脂塗装仕様では、プライマーの紫外線劣化がないことから、上塗りの塗膜厚さを薄くすることができる。

化成皮膜下地

塗装下地処理として、アルミニウムを特殊な処理液に浸漬し、化学反応により表面に保護性皮膜を作る処理。アルミニウムに対しては、クロメート処理が多く用いられる。

クロメート皮膜

クロメート皮膜とは化学皮膜(化成皮膜)の一種であり、クロム酸またはクロム酸系の薬剤を用いて処理し皮膜を生成する。この皮膜は極めて緻密であり、酸化アルミやクロム酸塩などから構成されている。皮膜の色調は淡黄色で約0.1 〜0.3 μm の厚さとなり、陽極酸化皮膜の様な厚い皮膜は得られない。
アルミニウム表面処理の表面処理においては塗装下地用皮膜として用いられる。

プライマー

着色塗装仕上げにおいて、塗膜とアルミニウム素地との付着性を高めるために使用される。当社では主として化成皮膜下地の着色塗装仕様で用いている。

焼付乾燥

製品に塗装を行った後、塗料を固有の温度で加熱して塗膜を硬化させる処理。

コート・ベーク

製品に塗料を塗布する工程を『コート』、その製品を焼き付けする工程を『ベーク』と呼ぶ。
例えば、2 コート1 ベークの場合には、塗料を2 工程で塗布し、1 工程の焼き付けで塗装を完了することを意味している。また、2 コート2 ベークでは、1 回の塗料塗布後焼き付けを行ない、さらにもう一度塗料を塗布し、焼き付けを行なって完了する場合を表わしている。
2コート1ベーク ・・・・・・ 塗装 ⇒ 塗装 ⇒ 焼付乾燥
2コート2ベーク ・・・・・・ 塗装 ⇒ 焼付乾燥 ⇒ 塗装 ⇒ 焼付乾燥

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